■「中国語」という言葉はない?
日本で話されている言葉は「日本語」、フランスで話されている言葉は「フランス語」、イタリアで話されている言葉は「イタリア語」、そして中国で話されている言葉が「中国語」・・・普通はこう思いますよね。
でも、中国では「中国語」とは呼ばずに「漢語(汉语hànyǔ)」と呼びます。漢民族の言語という意味です。
ご存知のように中国は56もの民族が住む多民族国家です。そのうちの一つの民族の言葉を国の代表のように扱い、「中国語」と言ってしまうのはちょっと・・・という事情があるのかもしれません。
この「漢語(汉语hànyǔ)」には、北京語、上海語、広東語などの方言も含まれます。
■中国人同士でも言葉が通じないことも
中国は13億近い人口を擁し、国土は日本の約26倍の大きさを持ちます。これほどの人口や国土の大きさになると当然話されている言語も様々で、大きく分けて7つの方言区があります。この方言区間の言語の隔たりは、日本に住んでいる私たちの想像以上のものがあります。
例えば、北京語と広東語の言語体系の違いは、英語とドイツ語ほどの開きがあるとも言われます。ほとんど外国語のようなものです。ですから、中国のテレビでは、(特に街頭インタビューなどには)字幕がつけられていることが多いのです。
■全国共通の標準語が必要
そこで誕生したのが、「普く通語」という意味の “普通话pǔtōnghuà” です。
“普通话”は北方方言の中心である北京語の発音や語彙、口語(話しことば)をベースに形成された標準語です。
すごく大雑把に言ってしまえば、ちょうど「日本の標準語と東京弁のような関係」といったところでしょうか。
“普通话pǔtōnghuà”は、国を挙げてのキャンペーンや、ラジオ、テレビなどの普及とともに全土に広まっていきました。わたしたちが一般に「中国語」と呼んでいるものは、この “普通话” なのです。
台湾では「国語(国语guóyǔ)」、シンガポールやマレーシアでは「華語(华语huáyǔ)」と呼ばれ、華僑社会のコミュニケーションツールとして大きな役割を果たしています。
ですから、“普通话”をマスターすれば、基本的にはどの方言区の人とでもコミュニケーションが取れるようになるでしょう。